2009年8月1日土曜日

人はさして合理的ではないらしい

最近読んだ本:
「世界は分けてもわからない」
「人は原子、世界は物理法則で動く-社会物理学で読み解く人間行動」

上のは生物、下のは物理よりの内容なんだが、なんだかわりに共通の話題を扱ってる部分もあり、並行して読んでたらおもしろかった。一言で言うとMany is different (P. W. Anderson)。集合体は部分の和以上のモノになる。しかしなんだ、下のはタイトルがトンデモ本ちっくではあるな。生協で買ってたら後輩に「なんかそれヤバい本ぽいタイトル」みたいなコメントをもらった。内容はまともだし面白いんだけどなー。めずらしく、物性物理よりの話題にからませて書いてあるから近しく感じた。物理よりの一般書といえば宇宙(ひも理論)関連な内容多いからなぁ。本文の最後の文がまたイイ引用句だし。よけいなお世話だけど原題のThe Social Atomをそのまま「ソーシャル・アトム」にしたほうが手に取りやすいような…

内容は、社会に現れる現象(人種差別や少子化や格差)なんかは、相転移とか物理で出てくる現象に近いということ。人の行動が総じて合理的ではないこと、それゆえ人の合理性を第一原理として作られた経済学ではうまくいかない例がいろいろ挙げてあって面白い。規制緩和による自由競争でつねに価格が下がるわけではないとか(カリフォルニアの電気料金とか)。規制緩和や民営化が万能薬のように言われているが、そう単純ではないみたいだな。

一番わかりやすいのは最初にでてくる「なぜ、アメリカでは白人が住んでいる区域と黒人が住んでいるエリアが分かれるか」という話題。普通に考えればそりゃ何らかの差別があるからでは?ってなるが、差別とかなんもなくても、ただ「自分が極端なマイノリティにはなりたくない」という条件を与えるだけでクラスターが出来上がる。磁性体とかと全く同じだ。シュミレーション結果の図もイジング模型のモンテカルロの結果と似てる気が。

「極端なマイノリティになりたくない→近しい人間のまねをしとこう」ってのは人類が古くから持っている性質みたいで、理性を軽く圧倒してしまうそうだ。”サクラ”が凄く有効に働くのもそんな理由だろう。さて、そんな性質があるならばいわゆる”民意”ってのは軽く操作されてしまうんではなかろうか。マスコミはいわば大規模なサクラみたいなもので、マスコミが大声で意見を垂れ流せば、世間の数割はそれに影響されるだろう。その割合がある程度大きければ”近しい人間のまねをしておく”相互作用によってその影響は伝搬され、なんとなく社会全体に広まり、マスコミ発の意見=”民意”になっちまう可能性がある。”民意”とかそれによって選ばれた政治家は一体何者ってことになる。ならば2大政党制はあぶないよなぁと思う。upとdownしかないスピン系で相転移がおこり強磁性体になるように、2つの選択肢しかなければ、どちらかの圧勝が起こりやすくなるんじゃなかろうか。そのパラメーターがマスコミの影響で変わるとかだったら実におそろしい。

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