2009年11月19日木曜日

パブリックコメントfor文科省

文科省には1200通のパブリックコメントが届いたとか。
きのう出したパブリックコメントを一応アップ。身バレはさすがにアレなので一部伏字。文章もアレだし議論の詰め方も甘い…。書いてて自分は科学技術政策とかほとんど知らないなぁというのがよく分かった。

なんとなく今まで、自分が頑張っていることを外部にアピールすることや、政治的なニオイのする行動にかかわることは、若干気恥かしく、あまりするもんじゃないという意識があった。たぶん同業者のなかにはそういう人も多いんじゃないかと思う。昔、知り合いに「今日はこれとこれと頑張った」というようなことを話すと「頑張ったことはわざわざ人に言うもんじゃない、だまって評価されるのを待つべき」というようなことをいわれたこともあったし。なので口を閉ざし、黙って論文を書いていればそれなりに評価されるだろうと言う風に進んできたらこういうことが起きた。今回も「そんなことは研究者の仕事じゃない」と黙って耐え忍ぶのもありかもしれないけど、あとから「あぁーあのときになにかしておけば…」てのは嫌だから。



文部科学省
中村正春 副大臣殿
後藤 斎 政務官殿

事業番号13 競争的資金(若手研究育成)について意見を送らせていただきます。

私は○○大学○○研究科にて博士課程に在学し、○○○○の研究を行っております○○と申します。民主党政権が目指す科学技術政策「科学技術のフロントランナーを目指して」を拝見し、「モノから人へ」という理念とそれに基づく研究者への資金直接配分や若手への支援等の方針に非常に期待しております。しかし、今回の行政刷新会議の議論を拝聴し、若手研究者育成に対する予算の減額要求に関して強い危機感を覚えました。

特に行政刷新会議にて予算減額が要請された、
1) 日本学術振興会による、特別研究員制度、科学研究費
2) テニュアトラック制度
について意見があります。

私自身、特別研究員に本年度より採用され、その研究費によって数編の論文を出版し、国内外の学会に参加し発表を行ってきました。研究費を税金から頂いている以上、科学技術の発展に寄与せねばならないと日々真摯に研究を行っております。その研究費や月々の奨励費に関する「生活保護のようである」とのコメントや、博士取得者について「社会的に需要がないのに供給過多になっている」というワークグループ委員の発言は大変残念に思います。

日本の研究機関において、博士課程学生・ポストドクターといった私たち20代~30代の若手研究者の寄与は非常に大きいです。名称上、博士課程学生は単なる学生、ポストドクターは卒業後進路が決まらず研究室に残っている存在のように思われがちですが、実際は自ら研究テーマを設定し遂行する自立した研究者として活動しています。ですが、研究費とポストに恵まれておらず、非常に不安定な立場に苦しみつつ研究活動を行っています。

研究費に関して申し上げれば、特別研究員制度は博士課程学生が申請できる唯一の公募研究費であり、科学研究費のなかの若手研究はポストドクターが採択される可能性がある数少ない種別の科学研究費です。この2つの科学研究費を減らすことは、若手研究者の海外流出や自由な発想に基づくイノベーション創出の機会を奪うことにつながります。

またポストに関しては、常勤教員採用数が博士取得者数に比べて明らかに少ない現状では、テニュアトラック制度が最も現実的な制度だと考えます。大学における37歳以下の若手教員比率が年々減少している(平成19年度では21.3パーセント)現状を見ましても、テニュアトラック制度のように若手を積極的に採用する仕組みを整備・維持することが必要です。博士取得者がキャリアパスとしてアカデミックのみを追求することが慢性的なポスト不足を招いているかのような委員の指摘もございましたが、周囲の博士学生は企業への就職にも意欲的です。ですが、博士卒学生に関して「狭い専門領域ばかりを勉強している」、「コミュニケーション能力を欠くのでは」等の偏見を持っている人事担当者が多いため、企業は博士学生をあまり採用しない傾向があります。企業の40パーセント以上が博士課程卒の学生を、60パーセント以上がポストドクターを、そもそも採用する予定がないのが現状です。また日本企業の新卒最重視の姿勢が中途採用として扱われることの多い博士取得者とりわけポストドクターの民間企業就職を困難にしています。博士課程卒業後の民間企業へのキャリアパス形成、それに向けた博士課程在学中に企業が求める能力を備えることができるような大学カリキュラムの改革などは今後必要でしょうし、現場の学生としても望むところであります。しかし、この不況下では、テニュアトラック制度を縮小したからといって、民間企業への就職者数が増えるとは考えづらく、単なる若手研究者の切り捨てとなるでしょう。

科学研究費制度・大学制度に数々の旧弊があることは事実です。しかし、代替制度を運用する前に若手研究者育成関連の予算を削減することは、研究者の人材喪失につながります。知識・技術の引き継ぎが重要となる科学分野において1世代の人材を欠くことは、今後長きにわたり悪影響を及ぼすことでしょう。

また、民主党政権の掲げるCO2 25%削減等の実現におきましても、科学技術力の更なる増進とそれを担う若手人材育成は必須であると考えます。予算に限りがあること、削減が必要であることは理解しておりますが、とくに若手研究者人材育成に関連する予算は保守していただくよう切にお願いする次第であります。

2009年11月18日水曜日

事業仕分けの結果(科学技術関連)に対して思うこと

ここ2~3日、研究室では科学技術関連の事業仕分けの話題でもちきり。新聞では主にスパコンであるとか、GXロケットの話題がメインですけど研究室での話題は若手育成関連の予算削減。だって切実なんですもの。

私たち博士課程の学生が唯一申請できる公的な研究費は日本学術振興会というところが取り仕切っている「特別研究員」。この制度は、審査を経て採用された博士課程の学生に月々20万(税込)の奨励費と、年間上限を150万とした科学研究費(最近、理論系だと大体50~80万?)が支給されるというものです。博士課程の学生は身分でこそ学生ですが、自分で学会発表を行い、論文を書き投稿するなど自立した研究者としての働きを求められます。支給される科学研究費は主に学会への出張旅費や論文投稿料、必要な器材を買うことに費やされます。実験に比べてかかるお金が少ない理論系ですら国際会議に参加すると一回で30万、計算機として使うためのパソコンが1台40万以上(メモリ12Gまで増設とか数値計算用にいろいろカスタマイズするから)、論文一本投稿すると2万とか普通にかかるので、埋蔵金とか作りようがありません。ちなみに審査は結構キビシいです。審査委員会が開かれて、大勢の委員の採点の上で採否が決まるので(噂はいろいろあれど)公平な方だと思います。決して事業仕分け会議で委員の方がおっしゃったような「ドクターの生活保護」のような制度ではありません。

さてこの特別研究員の予算も削減される方向で議論されているようです。さらには任期付正職員として若手研究者を採用する制度(テニュアトラック制度)の予算も縮減するそうです。若手研究者育成関連の予算を切って、今後の科学技術政策をどういった方向に持って行くつもりなんでしょう?

応用的、すぐに実用につながるような研究内容であれば、仕分け会議の委員が言うように、企業から直接必要十分なだけ資金をいただくことも可能でしょう。しかし、そうではない基礎的な研究についてはある程度、政府が支援する必要があるかと思います。基礎研究に携わる若手研究者を支援することが、国民の生活向上にどう反映されるかは非常に見えづらいとは思います。しかし、基礎研究というのは種のようなもので、数十年後に幅広く応用され花開く可能性を秘めています。新薬の開発や高性能デバイスも、数十年前の基礎研究が基となっています。また、最近では企業がコストダウンのため、基礎研究を大学に委託することも多く、得られた成果や特許が企業の製品を通じ国民へ還元されています。そうした研究活動に大きく寄与し、下支えしている博士課程学生、ポストドクターへの予算を削ることは、日本の科学技術力全体を下げることになりかねません

Web上では危機意識を持った方々が動き始めています
Twitterハッシュタグ#f_o_s
http://twitter.com/#search?q=%23f_o_s

科学研究費補助金の一部の執行停止に対する反対署名
http://www.shomei.tv/project-1343.html

大隅典子先生のブログ
http://nosumi.exblog.jp/10452121/#10452121_1

仕分けまとめwiki
http://mercury.dbcls.jp/w/index.php?%BB%B2%B9%CD%BB%F1%CE%C1%A5%EA%A5%F3%A5%AF#bccc7185

じゃあ私たち学生でもできることは何でしょう?
sivadさんのブログならびに科学政策ニュースクリップにて研究者ができるロビイング活動についてまとめられております。
http://d.hatena.ne.jp/sivad/20090903/p1
http://d.hatena.ne.jp/scicom/20091115/p1

また文部科学省はパブリックコメントを募集しています
http://www.mext.go.jp/a_menu/kaikei/sassin/1286925.htm


パブリックコメントを投稿された方がブログにアップされておられます
http://d.hatena.ne.jp/roadman2005/

これを参考にさせてもらいつつ、私も本当に稚拙な文章ながらパブリックコメントを作成し、文科省に送信しました。民主党本部の意見コーナーにも送りました。

「メール送ったところでなにか変わるんかいな」とは思わないでもありません。でも黙っていては変わる可能性は0です。短くても、文章構成が微妙でもメールを送り意見を言った方が言わないよりは断然いいと思います。